経口妊娠中絶薬ミフェプリストン(RU-486)解説 [人工妊娠中絶]

ミフェプリストン(mifepristone)は卵黄ホルモンのプロゲス

テロン(progesterone)受容体をブロックするステロイドです

 また平行して投与されるミソプロストル(misoprostol)、[ブ

ランド名:サイトテック(Cytotec)]は免疫などに直接影響を与

える、潰瘍防止タイプのプロスタグランディン(prostaglandin

)(4.参照)です。したがって、妊娠中にこのタイプのプロスタ

グランディンを服用することは、微生物感染、子宮内膜疾患など

種々の副作用が発症しやすくなります。サイトテックを生産する

サール社(Searle)は2000年にサイトテックをミフェプリストン

と併用しないよう書面で警告しています。

 ミフェプリストン(mifepristone)C29H35NO2 分子量429.6
11s-[p-(Dimethylamino)phenyl]-17s-hydroxy-17-(1?propynyl)

estra-4,9-dien-3-one
ミフェプレックス(Mifeprex)は1錠200mgの装丁となっており、

標準服用量は3錠です。

2.使用法の難しいミフェプリストンと副作用

 第一にミフェプリストンは2ヶ月程度(最終月経より49日間)

の初期の妊娠しか、効果がありませんが(60日くらいまで有効と

の研究もあります)、妊娠時期の判定は困難な作業です。中絶効

果の無い投与は、いたずらに女性のホルモンバランスを崩し弊害

が出てきます。

 第二に子宮外妊娠の有無を確認しなければなりませんが、ソノ

グラム(sonogram)などの音波探知装置が必要です。特に子宮外妊

娠を知らぬまま投与すると、子宮破裂など危険な状態となるとい

われます。胎児吸引など応急措置が可能な施設での投与が必要な

わけです。

 第三にミフェプリストンは副作用の経過を見ながら投与しない

と危険です。副作用表示には、腹部痛(abdominal pain)、出血

多量(bleeding)、胃腸障害(gastrointestinal)、敗血症

(sepsis)、重度微生物感染症(serious bacterial infections

)、子宮外妊娠時の危険性(ectopic pregnancies)、消化器潰

瘍(peptic ulcers)などがあり。

3.ミフェプリストン投与の現状

ミフェプリストンは、服用二日後にプロスタグランディンのミ

ソプロストル(misoprostol)を投与(メーカーは使用の危険性

を警告している)すると、中絶の成功率が高く(約90数%)、こ

れまでの15年間にフランスで60万人、欧州各国で30万人の使用者

がいるそうです(Population Councilの発表数字)。人口問題の

深刻な中国は統計が入手出来ませんが、生産会社がいくつかあり

、すでに500万人以上に投与済みとも言われています。
米国ではミフェプリストン処方の70%以上が、NPOのポピュレーシ

ョン?カウンシル(※1)が関与するプランド?ペアレンツフッド

(※2)などの医師やクリニックだそうです。一般の医師の取り

扱いが少ないことが特徴的です。そのために、米国でも違法な横

流し品を、禁止されているネット経由で取得するケースが多いよ

うです。

(※1)ポピュレーション?カウンシル「Population Council」。

自然療法普及や人口増、貧困、意図外妊娠など中絶を必要とする

世界の女性のためのNPO。ニューヨークをベースに各国に支所が

ある。
(※2)プランド?ペアレンツフッド(Planned Parenthood)(家

族計画)人口問題に取り組む米国の医療NPO。

4.ミフェプリストンの開発と歴史


 1980年にフランスで(RU-486)として開発されました。開発し

たのはフランス、ラッセル?ユクレフ社(Roussel Uclef)のボー

リュウ博士(Dr. Etienne-Emile Baulieu)です。
当然のことながら、当初は中絶薬としてではなく子宮ガン、乳が

ん、クッシング症候群 (Cushing's syndrome)などがターゲッ

トでした。結局、中絶薬として開発されましたが、発売には消極

的だった様です(宗教的倫理問題?)。一説によれば、人口問題

(外国?)を懸念する監督庁により発売を促されたとも言われて

います。

 当時のラッセル社は少なくとも米国向けの製造を拒否しており

、永らく米国で発売がされなかった原因の一つにもなりました。

その後ラッセル社は発売に前向きなクリントン時代の1994年に、

米国での製造発売の権利をNPO,NGOのポピュレーション?カウンシ

ル(Population Council)に贈与しました。

 ポピュレーション?カウンシルは1994-5年にかけて、医療NPOの

プランド?ペアレンツフッドを通じて約48千人の大規模な臨床治

験を実施します(Planned Parenthood発表数字)。同時期にFDA

も859人の治験に入りました。この米国での発売にいたる、複雑

な経緯は米仏の政治問題ともなり、ロビー活動が盛んだったよう

です。ミフェプリストンは、宗教関係者など中絶反対のグループ

と、増加する人口問題を懸念するグループとの世界規模の論議を

呼びながらも、フランス(1988)、英国(1991)、スウェーデン

(1992)、中国(1988)などで認可されています。

5. ミフェプレックス(MifeprexTM)

 米国は1973年に妊娠中絶(堕胎、abortion)が合法化されてか

ら、39百万人の中絶が行われ、200人の死者がでているといわれ

ます(ウォールストリートジャーナル)。
ミフェプリストンは前ブッシュ大統領には認可を阻止されました

が、クリントン政権によって2000年9月28日に認可されました。

 フランスで認可された1988年から12年後の2000年9月のことで

すが、ロビー活動が盛んに行われた政策として、議会を真っ二つ

に割る論争が起きた案件でした。

 米国での製造発売の権利を贈与されたポピュレーション?カウ

ンシル(Population Council)は、新たに設立されたダンコ?ラ

ボラトリー社を米国の総代理店として製造販売委託します。2000

年にダンコ?ラボラトリー社はミフェプリストンをミフェプレッ

クスのブランドで発売開始しました。

6.プロスタグランディンとは


 プロスタグランディンは1958年に羊の精嚢から分離され、研究

が進展しました。1971年には1982年のノーベル賞を受賞した英国

の薬理学者ジョン?ベイン(Vane,Sir John R).によって、痛み

や炎症に関係する、内因性生理活性物質(生体調整ホルモン)の

化合物群であることが判明しています。この発見により、アスピ

リンが痛みの原因物質であるプロスタグランディンの作用を阻害

しているメカニズムが解明されました。

 現在、プロスタグランディン(以下PG)にはその化学構造中に

ある5員環(あるいは6員環)の化学構造の違いからAからJ迄命名

されていますが、最初に見つかったのはEとFです。(生理時には

子宮と卵巣でE型PG、F型PGが大量に作られて、子宮を収縮して、

それが痛みとなって現われます)PGE1やPGE2の様に番号が振られ

ていますが、この番号はその化合物の二重結合の数を表していま

す。プロスタグランディンはいずれも脂肪酸から作り出されます

が、タイプは、元となる脂肪酸(HP参照)によって決まっていま

す。タイプにより悪玉、善玉双方に働くのが特徴です。
 
 ミソプロストル(misoprostol)の組成が推測される(未確認

)、リノール油など不飽和脂肪酸n6系のアラキドン酸から合成

されたタイプ2型のエイコサノイドは血圧や免疫機能の維持に大

切な働きをしますが、過剰となった場合は、動脈硬化、高血圧、

心不全、脂肪肝、アレルギー性湿疹、アトピー性皮膚炎といった

症状がでてくることがあります。

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